なんとかしたい子供の猫背。改善のヒントは遊びの中に

  • 2021年2月17日
  • 2021年4月8日
  • 猫背

今、教育現場では姿勢が悪い子供が増えているといわれています。「背中がぐにゃ」と曲がっている児童が増えたと感じている小学校教諭は6割以上にのぼっているのです。猫背は身体に負担がかかりやすいので集中力が途切れやすい上、口呼吸の原因になってしまうことも。できれば早いうちに直してあげたいと思うのが親心です。
 
ところが、子供の姿勢を矯正することは容易なことではありません。子供には理屈で説明しても通じず、そもそもいい姿勢の感覚を知らないためです。自然に直ることに期待したくても、放置するだけで改善を望むのは難しそう。どのようにすれば子供の姿勢はよくなるのでしょうか。一緒に考えていきましょう。

「すぐ疲れる」現代の子供たち

働き盛りの世代には疲れ知らずだった子供時代に戻りたいと思っている人もいるかもしれません。かつて、子供といえばいくら遊んでも疲れず、肩こりや腰痛とは無縁というイメージがほとんどでした。ところが、現代においてはちょっと事情が違うようです。

 小学校の教諭へのアンケート調査(※1)によると、最近増えている子供の特徴として「すぐ疲れたという」の項目がワースト10にランクインしてます。しかも、その割合はなんと59.0%。学校教育の現場では、最近の子供は疲れやすいという実感を持っている教員が少なくありません。

さらに深刻なのが「背中ぐにゃ」。猫背の子供が増えていると感じている教員の割合はもっと多いようです。猫背になるのもすぐ疲れてしまうのも、原因の一つはやはり筋力不足。第3位の「体が硬い」も運動不足をうかがわせる結果です。

東京都のアンケート調査では、保護者・教員・都民のおよそ半数が最近の子供の特徴として「周囲に気兼ねせずどこでも座り込む」ことが気になると回答しています。確かに最近よく見かける光景。

てっきりマナーの問題かと思いきや、これに対して東京都教職員研修センターは、姿勢を支える体幹が不足しているからだという考察をしています。つまり教育のプロたちは、マナー云々よりも体力の低下の方が深刻だと捉えているのです。

原因は時代ごとに少しずつ違ってきているのでしょうが、まず歩かなくなったこと。移動は基本的に自動車になり、フロアの移動もエスカレーターやエレベーターがない方が珍しい時代です。遊びの方法がスマートフォンや小型ゲーム機になったことも原因の一端でしょう。

特にスマートフォンや小型ゲーム機は姿勢にも影響を及ぼします。子供だって長時間スクリーンを見続ければ目が疲れるし、肩が凝ります。のぞき込む姿勢が続けば猫背の癖がついてしまうのも無理はありません。

本来、子供はいろいろなものに興味が移り、あちこちをフラフラと動き回るもの。跳ねたり、走ったりするうちに次第に体幹が鍛えられて、体力が付いてくるのと同時に正しい姿勢を取りやすくなってくるのです。

便利になった現代社会はそんな子供たちの特徴を封印して、正しい姿勢を制御するために必要な体幹を育むための運動機会を奪ってしまったのかもしれません。

(※1)子どものからだの調査 2015(日本体育大学・学校保健学研究室)

猫背の原因はゲーム・スマホだけではない

たしかに体力が低下し、猫背になりやすい環境が整ってしまっているとはいえ、それだけのせいにすることはできません。最近目立つ、極端に姿勢が悪い子供たち。よく観察してみると、共通点も多いことに気がつきます。

最も多いのが、親が姿勢に無関心なパターン。親自身姿勢が悪いという後ろめたさや、子供に強制したくないという思いのため、子供に注意することに二の足を踏んでしまう親も少なくはないようです。

しかし、子供が一人で姿勢をよくすることは難しいと言わざるを得ません。なぜなら、子供はもともといい姿勢がどんなものかの感覚を知らないため、自分がやりやすいようにするほかないからです。親の積極的な協力が必要です。

次に多いパターンがやせ形で高身長の児童。これは体格的にどうしても姿勢が崩れやすい子供たちです。このような子供にいきなり背筋をしゃんと伸ばしなさいと口をすぼめても、もともとの筋力が足りていないので不可能です。したくても、できないというのが大事なところ。

それにもかかわらず、頭ごなしにしかりつけることをしていませんか。姿勢の教育は長丁場になります。「叱るよりも褒める」をモットーにすることが成功の秘訣です。

体幹やバランス感覚を鍛える習慣を

昔の子供たちは、遊びの中で自然に体幹が鍛えられていました。やはり、言う通りにさせるというよりも、遊びを通して楽しみながら姿勢を維持する筋力を鍛えられるようにしてあげたいものです。

代表的なのがバランスボール。座ってバランスを取ると体幹のトレーニングになるし、正しい姿勢も自然と身につきます。ただ、子供の転倒事故が後を絶たないので、親の目の届くところで使わせるように。最近人気を上げているのが、「ブレイブボード」。

スケートボードのような見た目ですが、車輪が2つしかないのでアンバランスで、常に骨盤を動かさないと進めないのが特徴です。感覚としてはスノーボードやサーフィンに近いかもしれません。大人がやっても難しいと感じました。

乗れるように練習するだけでも骨盤の動かし方が自然と身につき、バランス感覚も養われます。このようなバランス感覚が必要な遊びでは自然と姿勢を維持する筋力を鍛えることができるので、ぜひ薦めてあげたいところです。

運動系の習い事はもちろん体幹トレーニングになるでしょう。特に武道やバレエなど、姿勢が重視される競技では子供も意識せざるを得ません。ここが大切なところで、いくら理屈で猫背が悪いといっても子供は素直に聞いてはくれません。

必要に迫られて自ら姿勢を改善したいと思うのを待つほかないのです。「姿勢が良くなる」=「うまくなる」と思わせることができる習い事は、自発的な姿勢の改善に取り組ませるのに最適です。

「背筋が伸びる椅子」のような自然と背骨が伸びるようになる椅子を使っていい姿勢を覚えさせるということも一つの解決策かもしれませんが、こちらの意図がミエミエだと子供は素直になってくれないもの。

どちらかといえば、、背筋を伸ばしたほうが長い時間楽に座れるということを知ってもらう方が改善が早まるのではないでしょか。体幹を鍛えるのは数カ月、ときには1年以上の時間がかかります。きれいな姿勢で座れているときには、素直に褒めてあげましょう。

楽に座れるようになり、腰や肩のモヤモヤが軽減されれば、集中力や学習意欲も増すという調査結果(※2)も出ています。諦めず、子供とともに乗り越えていきましょう。

(※2)子供の体幹を鍛える研究~正しい姿勢のもたらす教育的効果の検証~