表情筋を刺激して、「良い顔」で過ごそう

窓ガラスに映った自分の顔のあまりにくたびれように、思わずはっとしてしまったことはありませんか。表情は人間関係において非常に大きな役割をしているので、できればいつも若々しい元気な表情をしていたいものです。
表情を作っているのは大小さまざまな種類がある顔の筋肉たちです。筋肉ですから、手足と同じようにあまり動かさないでいると次第に衰えてスムーズに動かしづらくなってしまいます。ここで、顔の筋肉を大きく動かすことを意識してみましょう。

案外複雑な笑いのアナトミー

私たちは誰かに教えられることもなく人間らしい表情を身につけています。ですから、表情を作ることは大して難しいことだとは考えていないかもしれません。しかし、俳優の養成所などでは非常に時間をかけて表情の訓練を行います。誰にでも伝わる、活き活きとした表情を作るのはとても大変な苦労がいることのようです。

例えば“笑い”の表情について詳しく観察してみましょう。どの表情でも言えることですが、笑いの表情はいくつもの表情筋の微妙な組み合わせでできています。一般的に、笑うと大頬骨筋が収縮して口角が上がります。このとき、左右対称に上がると均整のとれた笑いになりますが、左右で収縮差があると苦笑、冷笑、その他の微妙な意味が加わります。

さらに大笑いすると眼輪筋が収縮して目を細め、目じりにしわを作ります。ところが、この収縮が弱いと顔の上半分での笑いの印象は薄くなり、いわゆる眼が笑っていない表情になってしまいます。

また、皺眉筋は文字通り眉間にしわを寄せる筋肉ですが、笑う際にはとくに力は入っておらず、もし余計な力が入っていると苦笑いのようになってしまいます。一生懸命に笑おうとしているのに、かえって眉を寄せて困っているような印象を与えるとは、まさに苦笑するほかありません。

人間というのはあざといもので、ほんの数ミリの筋肉の収縮具合も見逃さずに表情の意味として読み取ってしまうようです。もっとも基本的な表情の“笑い”でさえこの複雑さなのですから、他の表情まで考えようとすると、それこそどんな顔をしたらいいのかわからなくなってしまいそうです。

顔の体操で表情をほぐそう


現代は家に居ながらたくさんの物事を知ることができる時代です。あまり人と話さなくても満足することができるかもしれません。しかし、あまり無表情を続けていると、会話で喜怒哀楽を表現しているときよりずっと表情を生み出す筋肉を動かさずに生活していることになります。

そこで気軽にできる顔の体操に取り組んでみましょう。具体的には、顔の筋肉を指の腹で軽く押すマッサージと、大きく口・目・眉を動かす表情筋トレーニングが効果的です。

マッサージ

両手の指の腹を使って、顔の筋肉を軽く押します。全体的にまんべんなくマッサージしましょう。

表情筋トレーニング

できるだけ大きく口を動かしながらゆっくり「ら・り・る・れ・ろ」と言ってみましょう。基本の母音と、言いにくいラ行を組み合わせることがポイントです。また、目をパッチリと開いて鼻の舌を伸ばしたり、ウィンクを交互に繰り返すトレーニングもやってみましょう。

顔の体操は、鏡に向かって顔がどのように動いているのかを確かめながら行うと効果的です。1日のうちに何回か、気がついたときに行うようにしてください。意識して続けてみると、表情が少しずつかわってくることでしょう。

作り笑いでも幸せ?

心情が表情を作ると思われていますが、意図的に口角を上げて脳を勘違いさせることでメンタルにいい影響を与えるということが広く知られています。心から笑っているわけではなくても、笑顔を作ることで幸福感を感じるホルモンのエンドルフィンが分泌されるのです。

エンドルフィンというホルモンは免疫力とも密接に関わっています。このことから、笑いが免疫を司るNK細胞を活性化させるという研究結果もすでに多数報告されています。

昔から「笑う門には福来る」といいますが、健康にも当てはまりそうです。これは案外、笑い事ではありませんよ。