高齢になってもはつらつと動き回っている方がいれば、寝たきりで歩くこともままならないという方もいます。寝たきりになってしまうまでにはいろいろな理由が考えられますが、そのうち少なくないのが股関節の痛みです。
歩くたびに足の付け根が痛くなれば動き回る意欲が低下してしまいますし、動かなければ足腰が弱ってしまいます。股関節痛はだんだん活動的でなくなってしまう入り口なのです。
股関節の痛みに悩まされている人は日本に500万人程度いるといわれていますが、その多くが変形性股関節症だと考えられます。どのようにして股関節を守ればいいのでしょうか。
今は痛くなくても…、「女の子座り」のクセがある人は要注意
股関節は足の付け根にあたる大きな関節です。とても自由度が高い関節で、バレリーナのように脚を真上に上げることができるのも股関節の可動域が広いからです。
このような滑らかな動きを生み出しているのは、股関節特有の構造です。股関節はまるでプラモデルの関節部のように、骨盤にある大きなくぼみに大腿骨の丸い形をした頭部がはまり込んだ形をしています。
間には軟骨が挟まって潤滑油の働きをしているので、広い範囲を自在に動かすことができるのです。
ところが、日本人には、大腿骨がはまるくぼみの土手が通常よりも少ない人が世界平均よりも大勢いることがわかっています。
これは「臼蓋形成不全」という先天的な骨の病気で、通常よりも狭い範囲に負担が集中して軟骨がすり減りやすくなってしまいます。
臼蓋形成不全は遺伝性の病気のため、親や兄弟に股関節を痛めている人がいれば、臼蓋形成不全の可能性があります。
一方、大腿骨の方にねじれがある人もいます。
骨盤とつなぎ目の向きが違っていたり、お皿の向きが違っていたりする場合です。
太ももの骨がねじれていると股関節に負担がかかりやすくなり、股関節痛のリスクは高まります。
太ももの骨のねじれは遺伝的要素だけではなく座り方のクセ(女の子座り)で強くなることが考えられるので、女の子座りはできるだけ避け、正座やあぐらをするように心がけましょう。
股関節は筋力を鍛えて守る
股関節は他の関節と違い筋肉や靭帯に囲まれているため、なかなか症状を自覚しにくく、進行してしまってから気がつくことも少なくありません。
代表的な初期の症状は、いつもよりも長い距離を歩いたときに感じる足の付け根の痛みや違和感ですが、このような異常が発生する前から股関節にかかる負担を軽減して股関節痛の予防に努めることが大切です。
手すりを使ってゆっくり動く
股関節は上半身と下半身をつないでいる部分なので、立ち上がったり屈んだりする動作で負担がかかります。このとき急に動くとそれだけ大きな負担がかかってしまいやすいので、手すりなどを使って体重を分散させた上で、意識的にゆっくり動くように心がけましょう。
例えば「立ち上がるときには椅子や手すりにつかまってゆっくり立ち上がる」「急にしゃがまない」「しゃがんだまま動かない」「荷物を持ち上げるときには膝を曲げる」ようにします。
グッド歩行
歩行時に股関節にかかる負担は膝よりも大きく、股関節には体重の4~5倍もの負荷がかかります。
そのため、まずは減量して股関節への負担がなるべく少なくなるように心がけましょう。1kg減量すれば、4~5kgもの負担を減らすことになります。
次に、股関節に負担がかかりにくい歩き方である「「グッド歩行」を身につけましょう。
グッド歩行のポイントは、かかとから着地してつま先でけり出すように足を動かすことです。膝は伸ばしきらずに少し曲げるようにします。
さらに意識してゆっくり歩くようにしましょう。
グッド歩行をすることで足を着地させたときの衝撃を膝で吸収することができるため、股関節の負担が軽減されます。
3秒キープ体操
確かに私たちの中には遺伝的に股関節を痛めやすい素因を持っている人がいるかもしれません。
しかし、そういう素因がある人でも、股関節を周りから支える筋肉を強化することで関節を保護することができます。
股関節痛を予防するために「3秒キープ体操」を行いましょう。
1. 仰向けになり、つま先を立てたまま片足を足一つ分ほど持ち上げて3秒間キープする
2. 横向きになり、片足を体一つ分ほど持ち上げて3秒間キープする
3. うつ伏せになり、お尻に手を置いてつま先を伸ばしたまま片足を足一つ分ほど持ち上げて3秒間キープする
3秒キープ体操をしても痛みが悪化するようなら変形性股関節症が進行している可能性があります。体操を中止して早めに医療機関を受診しましょう。
どの関節にも言えることですが、関節は一人に付き一個しかなく、替えがありません。
初期のうちならどのような動き方をしたら症状が悪化するのかをよく観察し、その動きを避けることが大切です。
その上で関節を守る対策を心がけ、上手に付き合っていきましょう。